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2010年2月14日、松江テルサにて、景観まちづくりシンポジウムを開催しました。 第一部:基調講演。 講師は、大阪市、株式会社創造工房ダ・ビンチ代表取締役/まちづくりプロデューサーの廣野敏生さん。 第二部: まつえ・まちづくり塾の2人が、昨年12月のワークショップ報告。 順光寺若院のナガタニさんと、島根大学4回生の越野さん。 そしてパネルディスカッション。 アドバイザーは廣野敏生さん、コーディネーターは、足立正智さん(島根県建築士会会長)。 パネリストは、松浦正敬さん(松江市長)、片寄洋子さん(インテリア・コーディネーター)、山根秀明さん(まつえ・まちづくり塾副代表/島根県景観アドバイザー)。 松江開府400年祭「景観まちづくりフォーラム」 景観まちづくりシンポジウム 「松江らしさ」を後生に ーくらしと調和する松江の景観づくりー 2010年2月14日(日) 10:00ー12:30 会場:松江テルサ ●基調講演 廣野敏生氏((株)創造工房ダ・ビンチ代表取締役) 「おもてなしの文化がまちの「しつらい」を創る 松江の景観はすばらしい。ほんとうにこの景観のすばらしさに感動し、うらやましく思う。景観というのは先人の歴史文化を映し出す鏡であり、教科書だと思う。 目の肥えた松江の方々に景観のことについてどのようにして話をするべきか、ずいぶん悩んだ。 景観というと、総論賛成、各論反対ということが多い。 私は大阪に住んでいるが、その大阪の話をしたい。大阪は景観でいうと無法地帯。生駒地域には、マンションが多くなり、問題になっている。大阪城の周辺にも高層ビルに囲まれるようになってしまった。 そのときに、感じた。自分のマンションから生駒山が見えなくなり、大阪城が見えなくなったが、実は、自分の住んでいるマンションが周辺の人々にも影響を与えていることを思い知った。景観をよくしていくことは、総論賛成であっても、自分のことになると反対となる。 今回、松江では雑賀地区、城北地区についてまち歩きワークショップを開催し、それをうけてシンポジウムを開催している。 まちづくりを成功させるには、文化のビオトープという考え方が大事。 暮らしの内側に向かって問いかけていただきたい。自らの中で景観への考えを発酵していただきたい。自分の立場で考え、自分の近隣のことを含めて考えてもらいたい。 ワークショップに参加し、シンポジウムに参加する。そして各自が目利きの力を養うこと。このようにして、スパイラルアップしてくことが重要。 松江の景観が保ち続けられたことは、どうしてなのかを考えた。松江の友人の家にいくと、床の間に花が生けてあり、生菓子とお茶をふつうに出してくれる。 大阪では、人に会うと、「まいどまいど」という挨拶だが、松江では立ち止まって頭をさげて挨拶をする。このような文化が松江にはある。 わびさびの文化が殿様だけでなく、庶民にも根付いている。おもてなしの文化が根付いている。 まちのたたづまいは景観に、ふるまいは人々の動作につながる。 今回のフォーラムは建築士会、NPO、行政が協働している。一座建立という言葉がある。市民がまちぐるみで参加することが大切。 お茶をたてるは、「点てる」という字を書く。 人と自然、人とまちが交わるところが「点てる」ということ。この「点てる」という文化が大切。 天地人という言葉がある。天と地のはざまに人というものが暮らしている。人はわきまえを知り、心得を考えないといけない。松江ではほどよい関係で、自分なりの景観の規範を持っている。今までやってこられたわきまえを続けてほしい。このわきまえを忘れないでほしいというのが私の願い。これを忘れると、天災そして人災にもつながる。 最後に景観と観光の相乗効果について話をしたい。景観に魅力を感じて人を呼び込むことにもなる。持続可能な観光にもつながる。そして観光のブランドにもなる。まちをいつくしまなくてはならない、まちに誇りを持たなくてはならない。ブランド化した京都ではたばこのポイすてに対して行政が線をひく。しかし市民はさらにその枠を拡大していこうという動きをしている。自分たち自身を深くそのルールの中に入れようとしている。 松江も同じはず。京都には、立派な企業が多い。京セラ、ワコール、任天堂など。これらの企業は決して本社を京都から出ていこうとしない。それに対して、大阪ではパナソニックをはじめとして、大阪で生まれた企業が東京に本社をうつしている。 六本木ヒルズのような狭いところで、仕事をするのではなく、松江のようなゆったりとしたまちで仕事をすればよい。 フランスのナントというまちがある。教育や芸術、文化を発信するまちとして、発展している。少子高齢化、一局集中と言われる中で若者がこのまちに帰ってこれるようにしないといけない。政府の経済成長戦略の中で、観光立国、環境立国ということが国策として言われている。観光と景観という相乗効果を生んでほしい。 松江では建築士と市民、市民団体、行政が協働で進めている。これはすばらしい民主主義。 中国の図書の中で、観光とは国の威光を見せ、民の輝きを見せることである、と書かれている。このシンポジウムの中でみなさんが議論することこそが、民の輝きではないか。 この景観という資産をどう生かすか、市民のひとりひとりが考えていくことが重要と思う。 ●景観まちづくりワークショップ報告 足立)松江市歴史資料館が開館する予定がある。幕末の頃の城下町の模型を作成している。昔の松江のまちのすばらしさ、おもしろいところがある。現在の松江のまちとあまり変わっていないと思う。 松江のよさ、おもてなしの文化というのはあるが、景観としての課題は多いと思う。悪いこと、難しいことを、松江のまちでは抱えている。 昨年に、雑賀町と城北地区のまち歩きワークショップを実施してる。 この両地区というのは、松江でも歴史的な地区。城北の石橋町は江戸時代では職人のまち。酒屋、醤油やなどがあり、水がよかった。雑賀町は、下級武士、鉄砲衆のまち。間口50間に奥行き15間、その間に20軒の家が建ち並んでいた。 <城北地区のワークショップ報告> ながたに)12月12日に、まち歩きワークショップを開催した。城北公民館から出発し千寿院などを見てあるいた。千寿院では、まちの眺めを見ることができたが、高いビルや景観に調和しない色のビルも見られた。 順光寺では、本堂の高さが近隣の建物の高さの基準になっていた、と聞いている。 順光寺裏の小川は、とても風情のある川で、近隣の人の散策コースになっている。 公民館では、グループに分かれて、気づいたことをまとめたまち歩き地図を作成した。この地図は、今回のシンポでもアトリウムで展示している。 北堀から石橋町を歩いていると、アイストップに配慮していない建物もあった。まちなみの中に違和感のある色彩の建物があることが気になった。この地区は水に特徴で、井戸も多い。 越野(島根大学)) 雑賀公民館から出発し、しょうぎ山、雑賀まちのまちなかを歩いた。 昔ながらの細い道で、車が1台通れるぐらいの幅のところが多い。しかし、歩く人にはちょうどいい。しょうぎ山からは、松江城は見えなかったが、宍道湖は見えた。美術館の高さが低いのはよかったと思う。 まち中には古い建物が多く残っている。曽田文庫という民間で運営する図書館もこの地区にはある。 歩いてみてはじめて気づくことが多かった。松江のまちを発見し、知ることになる。若い世代がもっと考えないといけない。 足立)雑賀町は、若槻れいじろうといった偉大な政治家を輩出したまちでもある。 ●パネルディスカッション <パネラー> 片寄洋子(山陰インテリアコーディネーター協会会長) 山根秀明(NPO法人まつえ・まちづくり塾副理事長) 松浦正敬(松江市長) <アドバイザー> 廣野敏生((株)創造工房ダ・ビンチ代表取締役) <コーディネーター> 足立正智(島根県建築士会会長) 山根)景観アドバイザーの役割をいただいている。最近では松江大橋、新大橋の色のぬりかえのアドバイスをしている。本業では建築の設計をしている。建物の設計をする上では景観という視点は、はずすことができない。クライアントの要望、予算を考えながら、景観を含めて設計をする。 まちづくり塾では、まつえのまちが好きだ、というメンバーが集まっている。自分たちが楽しみながら、少しでも松江のまちがおもしろくなる、ということをモットーに様々な活動をしている。 昨年の3月にはまちづくり塾10周年記念として、「まちづくり雑貨店」という催しを開催した。市内のさまざまなまちづくりの取り組みを発表してもらった。 今年は、島根県の協働事業で、まち歩き観光の取り組みをはじめた。 近代建築をめぐるコース、城北の古いまちなみを巡るコース、京店・白潟を巡るコースという3つのコースを設定し、100名ほどの参加があった。 3月には、あらためて城北コース、食べ歩きコースという2つのコースで募集している。 その後、国土交通省の景観整備機構の会議に呼ばれたことがある。NPOで景観整備機構に指定されている例は少ないということだった。同じ会議で参加していた川崎市の方は、じぶんの市が景観について、話がしにくいとのことだった。 松江では、多くのひとにまちを歩いてほしい。 片寄)自分にとっての松江らしさ、ということだが、宍道湖、水辺の風景だと思う。 この町でうまれ、このまちで育ったが、このまちで育ってほんとによかったと思う。 以前、あるいイベントで、ヘルン旧居などを子供と、いっしょに歩いたことがある。 奥谷の洋館を、インテリアコーディネーター協会として、10人のメンバーと訪れたことがある。楽しいまちになってきたな、と思った。各地でこういう宝をみつけていくといい。 数年前から宍道湖湖畔に高層マンションが建つようになった。知人から、松江はどうなるのか、と聞かれる。 景観審議会の委員をつとめている。伝統美観地区については、よく守られている。マンションについては、法的には強制ができない、ということを知った。 住民への説明をしている、ということも知った。 まちづくり塾の活動が10年になっている、ということだが、それぞれの取り組みがどのようになっているのか、ということが知られていない。それはもったいない。 自分の仕事は室内のデザイン、ここちよく住まうことを仕事としている。 それぞれの人がどうしたら心地よくなるか、といのは、人によって違う。まちづくりも同じ。どうしたら心地よくなるかは、住民が声を出していかないとわからない、答えがでない。まちづくりとインテリアは似ていると感想を持っている。みなさんといっしょに考えていきたい。 松浦)景観と行政のまちづくりの調和について、十分な認識を持てないというところがあった。廣野先生の話から、景観を守っていくことが、若い人をよびもどすことができる。このまちに活気をとりもどし、定住、雇用の場を確保することが、まちづくりの目的になる。 松江のまちに訪れた方から、このまちはいいまちですね、ぜひ守ってくださいと言われることがあるが、箱庭的に残していくということには違和感がある。 ワークショップでこのまちは、こんなにいいところがあるという発見することは、その出発点になる。行政としては、景観条例をつくったり、広告物条例をつくっているが、そもそもなんのためにしてるか、ということをたちかえる必要がある。 景観を考えることが、民主主義を育てていくということを、廣野先生がいわれた。このまちの誇りだ、残していきたいということをみんなが思うことが重要。しかし、なんのために残すのか、ということをみんなに問いかけていきたい。 自分は松江に住んでいることが誇りだと思うようになるといい。 松江にはプログラミング言語ルビーを発明したまつもとゆきひろさんが住んでいる。まつもとさんは、松江のまちは、オンとオフを切り替えやすいまちだ、ということを言っている。景観を守るということは、働く人をひきつけることにもなる。 松江は、景観とともに、環境行政について積極的に取り組んでいる。400年前はこのまは沼地だった。人工的にこのまちをつくった。リサイクルの仕組みをいろいろとつくってきた。今の時代にも復活させたいと考えた。人にやさしいまちづくり条例をつくり、人が住みやすいまちづくりに取り組んできた。きれいなまちづくり条例で、ポイ捨て禁止に。市民のみなさんの提案で、この地域にも広めてほしいという話が広がっている。 中心市街地が衰退している。空家が目立っている。景観を守るという視点から考えていかないといけない。高層建築に対しては、この地区ではどのような高さにしていくか、ということを細かく考えていかないといけない。 廣野)松江のひとたちは、ほんとにがんばっている。情報の発信力、メディアの中でどう扱われるか、ということを考えないといけない。松江のお菓子屋さんが、外国にお店を出した、ということを大阪で聞くようにならないといけない。メディアの活用を戦略的に考えるといい。今回のシンポについても、県外の人にも知られるようになるよかった。シンポといっしょに、まつえのまちを案内する、といったプログラムを考えるとよかった。 奈良では、ラジオウォークというイベントがある。4時間半かけて、万葉のまちを歩く。イヤホンつけた人が全国から集まる。 1万7千人があつまる。 足立)具体的な提案をしてほしい 山根)空家が目立っている。そこを活用して、まちの縁側のような、だれもがふらっと寄れるような場がつくれないかと思っている。 片寄)いかにして住民をまきこんでいくか。 市民の半分が、趣味はまちあるき、というふうになるといい。楽しいことがあると、みんなまちを歩く。それが景観づくりにつながるといい。 松浦)これからはまち歩き観光をやっていきたい。松江のまちは、車でとおっただけではわからない。このまちを発見していくことができるように。宿泊客を増やすことが大切。日帰りと宿泊では落とすお金が5倍ぐらい違う。松江は宿泊客が実は少ない。松江の良さをよくしってほしい。住んでおもしろい、ということを観光のねたになるといい。わがとこまち歩き、ということができるといい。 全国の旅行代理店が、ここはいい、というようなところよりも。 まち歩きに欠かせないのは、ガイドさん。ガイドさんがいることで、楽しみが違ってくる。ガイドさんも収入につながる。観光の質をかえていきたいと、いろいろなプランを考えている。 参加者)はまさだに住んでいる。建築士。行政からはなれて12年になる。確認申請がでるときに、景観、環境の面からアドバイスすることができるといい。 参加者)南田町からきた野津。石橋のワークショップで、川の話があった。せんじゅいんから川のほうに行くというルートがある。市長からは、まち歩き観光という話があった。ヘルン旧居に行く観光客が、また駐車場にもどってしまう。それを、知事公舎の横をぬけて、切り通しをいく道からのお城の眺めはとてもよい。ひだりさん瓦というのは、出雲地方独特だが、費用が倍になる。それが課題。 まち歩きの場合、トイレが課題になる。めいめいあんのあたりに1カ所、せんじゅいんのあたりに1カ所は必要ではないか。トイレの整備は課題だと思う。 松浦)県立大学の女の子がまち歩きのコースをつくってくれた。そういうところと連携してほしい。 来年は大博覧会を予定しているが、そのガイダンスができるのが、歴史館。町歩き観光を大々的に実施したい。 参加者)ほしいと思うのは、松江の景観100選というようなもの。市民の関心を寄せるようなもの。私のすきな景観スポットで募集するとよいい。 山根)まちづくり塾でも大切にしたい、建物100選というブログをはじめようとしている。そこに選ばれたものを、我々で勝手に表彰してしまおうとも考えている。 足立)最後にひとこと 片寄)「全員参加、共感」自然にきれいなまちができるように。 山根)「個々にまちに関わることができる場をつくる」 松浦)「誇りと愛着でオンリーワンのまちづくり」松江城を国宝にしようということを言っている。国宝運動が、市民の意識を高めるきっかけになる。 足立)「歴史と現代の調和」まつえは風水思想のもとにつくられたまち。松江にはそれらが残っている。それがオンリーワンでもある。 廣野)インドの言葉で昔は新しく、未来は懐かしい。 未来にむけての新しい景観をどうつくっていくか、ということを考えてほしい。
by mjuku-2009
| 2010-02-17 14:45
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